近年の古着のホットワードとなった『90’s』そして『アーカイブ』という視点は、時代によって埋もれかけていた名品にスポットライトを当てることとなりました。古着のお買取をさせて頂く上でも、その価値の変遷は見逃せない部分です。

「90年代」は多様なファッションの芽吹きが見られたと言える時代。サステナブルという考え方が定着しつつある昨今、リセールマーケットも拡大を続けており、過去のクリエイティブを再評価するという潮流は起こるべくして起きているのかもしれません。

ゼロ年代が「ヴィンテージ」視点で語られる時代は目の前

90年代がそうであったように、リバイバルにより日の目を見る名品はゼ2000年代(ゼロ年代)のファッションにも数多く存在する可能性を秘めています。2020年という区切りを越え、『ニューヴィンテージ』や『ネクストヴィンテージ』といった言葉も囁かれだした現在。「ファッションは繰り返す」という意味でも、90’sからもう少し先まで視点を進めたゼロ年代にスポットを当てて掘り下げていくのも、古着・リユースをさらに楽しむ魅力の一つになりそうです。

今回はその中でも、いわゆる「ヴィンテージ古着」というカテゴライズとは若干趣を異なりがらも、現在の「ゼロ年代ファッション」にも大きな影響を与えているドメスティックブランドについて再考していきたいと思います。

「ドメブラ群雄割拠」と「古着ミックス」が、ゼロ年代と現在の共通点

情報化の波に乗りファッションが加速度的に拡大・拡散していったゼロ年代は、多くのドメスティックブランドが誕生した10年でした。これは、インスタグラム等のSNSツールが急速に普及した2015年頃~現在に至るまでの流れも非常によく似た構図を辿っているように感じます。近年はインディペンデントなブランドが数多く誕生しており、それらを古着も交えた自由な感性でミックスするスタイルが人気となっているというのも、不思議な共通項です。

そういった由縁もあってか、ゼロ年代を発祥とするドメスティックブランドには現在も根強い人気があったり再評価が進んでいるものが多く存在します。例えば、2000年代に誕生しリーバイス517の一大ブームを巻き起こした『N.HOOLYWOOD/エヌハリウッド』は、古着をバックボーンに持った初期のアイテムに名作としての評価が高まっています。フレア&ブーツカットシルエットは現在も年々注目度が高まってきているところですが、まさに時代は巡っている…というところでしょうか。

N.ハリウッド×リーバイス517

人気が落ちなかったりリバイバルとなるブランドの特徴として、「世界観が一貫している」ことや、「現在のファッションにリンクしやすい」ということがありそうです。もともと古着屋からスタートを切ったエヌハリもそういった部分が人気の秘密かもしれません。思えば『UNUSED/アンユーズド』もそのブランド名の通り初期から古着ともリンクした匿名的なコンセプトを貫いておりますが、単にリリースのシーズンのみで測れない魅力を秘めているブランドは実はたくさんありそうです。

世界観という意味においては、JOHN LAWRENCE SULLIVAN/ジョンローレンスサリバン・LAD MUSICIAN/ラッドミュージシャンといったブランドは、近年産声をあげた新興のドメブラにも小さくない影響を与えており、初期作品の再評価は今後も加熱しそうなジャンルです。

他にも、GENERAL RESEARCH/ジェネラルリサーチ(現在のマウンテンリサーチの前身)やFINAL HOME/ファイナルホームは、ミリタリーやタクティカルウェアといった独自の切り口を早い段階から展開しており現代ファッションとも相性が良く、90~00年代品にはデザインとして非常に面白いものが多く存在します。

ジェネラルリサーチの「パラサイト」シリーズ

90’s以前のヨウジヤマモトやコムデギャルソン、イッセイミヤケといったデザイナーズブランドや、NUMBER (N)INE/ナンバーナイン・UNDERCOVER/アンダーカバーといったブランドのアーカイブ評価は世界的に見てもすでに幅広く知られることとなっていますが、今後はその後を続くブランド群から未来のヴィンテージウェア=「ニューヴィンテージ」も生まれてきそうです。

特に2000年代は「東京発」のファッションシーンが世界的にも注目を集めだした時代。『kolor/カラー』や『sacai/サカイ』のようにワールドワイドな評価を受けるブランドはもちろんですが、『SASQUATCHFABRIX./サスクワァッチファブリックス』や『FACETASM/ファセッタズム』など、2010年代に入ってからのノームコアブーム以前に多様なファッションが時代を彩っていたブランド初期のアイテムも、今見ると新鮮味を増して映りそうです。

I.S. Chisato Tsumori Design / イッセイスポーツチサトツモリデザイン 80’s
イッセイミヤケの80’s バックロゴナイロンブルゾン
サスクワッチファブリックスの一時代を象徴するワコマリアコラボ

現行の服には無い時代感を纏った感性が光る品物の片鱗をリユースアイテムから探すのも一興ですし、今クローゼットに眠るお洋服にその価値が宿っている・・・なんてことも大いに考えられます。まだ見ぬ「ニューヴィンテージ」は、実は意外とすぐ近くに存在していると思うと、古着を見る楽しみもさらに広がる気がしてなりません。